結婚式に招待されたら、まず悩むのが服装ではないでしょうか。男性ゲストの礼服は、格式に合わせてさまざまな種類があり、その場にふさわしい服装を選ぶことが大切です。
「結婚式に着ていく礼服って何?」
「スーツで行っちゃだめなの?」
「ブラックスーツとスーツは何が違う?」
スーツ選びに慣れていなくて、ビジネススーツとフォーマルスーツの違いに悩む方も少なくありません。また、礼服選びを間違えてしまうと、結婚式で周りから浮いてしまうこともあるでしょう。
そこで今回は、多くの結婚式を手掛けた元ウェディングプランナーの筆者が、礼服のマナーや種類について解説します。選び方や着こなしポイントも紹介していくので、結婚式が初めての方や自分らしく着こなしたい方も、ぜひ参考にしてください。
礼服の基本マナーと種類
礼服とは、冠婚葬祭で着用する服装のことです。結婚式の他、お葬式やお通夜といった法事にも着用機会があります。
フォーマル度によって種類が異なり、格式が高いものから正礼装、準礼装、略礼装に区分可能です。
黒色が多く、フォーマルな場で着ることから「フォーマルウェア」「ブラックフォーマル」とも呼ばれます。
冠婚葬祭の礼服とは
冠婚葬祭とは、挙式・披露宴や葬儀、入学式や成人式などの式典のことです。人生の節目に行われる儀式になるので、その場に合った正装で参加することが求められます。
結婚式では、ゲストは主役に準ずる礼服が基本なので、準礼装や略礼装を着て参列することがマナーです。 古い歴史あるホテルや厳格なチャペルなどの結婚式に参列する場合は服装の格も上げます。
1.正礼装
正礼装はモーニングコートや燕尾服(テールコート)のことで、フォーマルウェアの中でも一番格式の高い礼服になります。
新郎新婦の両親も結婚式では正礼装が正しいです。
▼モーニングコート
モーニングコートは、午前中から夕方までの明るい時間帯に着用する正礼装になります。
ウェストあたりの前身の着丈から後ろに向かって上着が大きく斜めにカットされ、裾が膝くらいまでの長さのあるジャケットが特徴です。
結婚式では両家の父親が着る衣裳として定番で、最近では少なくなりましたが仲人や媒酌人も着用できます。
裾を切っていないデザインはフロックコートと呼ばれ、乗馬用に裾を切ったのが始まりとも。
▼燕尾服(テールコート)
燕尾服は、夕方から夜の時間帯に着用する正礼装になります。
前身の着丈が腰のあたりの短い長さで、後身は燕の尾のように膝あたりまで長いのが特徴です。
通常のネクタイではなく、白の蝶ネクタイをつけるのがコーディネートのルール。
2.準礼装
準礼装は正礼装に次ぐ礼服で、ディレクターズスーツとタキシードの2種類です。
結婚式では、男性ゲストが着用する服装の中で一番格式が高い礼服になります。主賓や上司、乾杯の挨拶やスピーチを行うゲスト、兄弟・親族などが着用するのが一般的です。
▼ディレクターズスーツ
ディレクターズスーツは、モーニングコートと同じく日中に着用する準礼装になります。
30代以降になってくると着用の機会が増えてくるかもしれません。
黒のジャケットにベスト、スラックスはグレーと黒のストライプが一般的です。
ネクタイは、白黒のストライプやシルバーグレーを合わせます。
▼タキシード
タキシードは、夕方から夜に着用する準礼装です。
しかし、日本では正礼装として新郎がレンタルすることも間違いではありません。
サテン地の衿のついた黒のジャケットに共布のスラックス、白いワイシャツに黒の蝶ネクタイ、ベストかカマーバンドが基本になります。
3.略礼装
略礼装は準礼装に次ぐ礼服で、ブラックスーツとダークスーツの2種類です。
結婚式の礼服の中ではポピュラーで、主賓から友人の結婚式にまで幅広く着用することができます。
結婚式以外の冠婚葬祭にも着回しが可能です。
また、平服でお越しくださいと言われた場合は略礼装を目安に装います。
▼ブラックスーツ
略礼装のブラックスーツは、昼夜問わず着ることができる黒無地のスーツになります。
白いワイシャツに白やシルバーのネクタイが結婚式の定番です。
グレーやシルバーのベストを合わせると、より上質な雰囲気になります。
靴と靴下は黒色のものを用意してください。
ネクタイを付け替えると喪服としても着用可能です。
▼ダークスーツ
ダークスーツは、黒以外のダークネイビーやダークグレーのスーツです。
カジュアルな結婚式に向いているので、ホテルなど格式の高い会場では着ない方がいいでしょう。
華やかなネクタイや胸ポケットのチーフで、仕事着に見られないようにするのがポイントです。
結婚式の服装マナーについては以下の記事で詳しく解説しています。
革靴などの小物についても紹介しているので、参考にしてみてください。
URL: https://www.kekkonshikijoerabikata.com/7506/
男性は和装よりも洋装参加が多い
男性の礼服には和装もありますが、女性ほど和装に馴染みがないため、男性ゲストは洋装がほとんどです。神前式で、新郎が紋付袴を着用するくらいでしょう。
和婚では新郎新婦の父も紋付袴で揃えるのが基本ですが、最近では洋装を着ることが多いです。
スーツとフォーマルウェアの違いを解説
ビジネスなどの日常で着用するスーツは、動きやすさや快適さなども考慮して作られています。一方で、結婚式などの改まった場で着られるように、格式や品格を重んじてデザインされているのが礼服です。
明確に違いがあり兼用はできません。ここでは、スーツと礼服の違いを具体的に解説していきます。
黒色の濃さと色合い
漆黒の礼服であるほどフォーマル度も高くなります。そのため光沢はなく、深い黒色であることが特徴です。
礼服 | 濃く深い黒であるほど格式が高く、 特殊な生地の染め方や織り方で漆黒に見えるよう作られていることが多い。 |
スーツ | 光の当たり方によってはグレーに見えるなど、 薄い黒色や濃紺をしている。 |
生地の違い
スーツと礼服は使われる生地も異なり、手触りや質感が全く違います。
礼服 | 礼服は上質感が優先されるため、 ウール100%のものが多い。 |
スーツ | 伸縮性や耐久性などの機能面が重視されるため、 ポリエステルなどの化学繊維も使われている。 |
デザインの特徴について
似通ったブラックスーツとスーツを見分けるポイントは、デザインにもあります。次の3つの特徴を押さえておきましょう。
ブラックスーツ | スーツ | |
衿の形 | 下の衿が上向き | 下の衿が下向き |
衿のステッチ | 端にステッチがない | 端にステッチがある |
ジャケットの裾の切り込み | 背側の裾の切り込みがない | 背側に裾の切り込みがある |
着用シーンの違い
礼服 | 非日常的なイベントで着るもの。結婚式をはじめとする冠婚葬祭のみで着用する。 |
スーツ | ビジネスシーンやちょっとした集まりなど、 日常生活での着用がメイン。 |
ブラックスーツを選ぶときのポイント
ブラックスーツを着用するシーンは、結婚式だけではありません。葬儀やその他の行事でも着ることができるため、選ぶときは結婚式以外のシーンも考えて選ぶとよいでしょう。
どのシーンでも活躍できるように、定番のブラックスーツを1着持っておくと安心です。以下のポイントを参考に選んでみてください。
長く愛用できるかどうか
ブラックスーツを選ぶときは、長く愛用できるものを選びましょう。
上質な礼服はしっかりしているため、きちんと保管しておけば5年先、10年先も着ることが可能です。年を重ねても着続けられる礼服を選べば、頻繁に買い替える必要もありません。
シングルかダブルかで迷う方もいますが、好みで選んでOK。20代から40代くらいまではシングルが人気で、50代以上になるとダブルが人気です。
また、礼服には季節感がないためオールシーズン仕様のものを購入します。どうしても真夏の着用がつらいときのみ、夏仕様のものを検討してみましょう。
濃い黒色かどうか
ブラックスーツを選ぶときに迷ったら、濃い黒色を選ぶのがポイントです。
礼服は、黒色が濃ければ濃いほどフォーマル度が高くなります。年齢を重ねていくほど濃い黒色が上品に見せてくれるので、長く愛用するなら色の選択も重要です。
サイズとデザインに余裕をもたせるのがおすすめ
多少体型が変わっても大丈夫なように、サイズとデザインに余裕があるブラックスーツを選びましょう。今の自分にジャストフィットの礼服を選んでしまうと、数年後には着れなくなるかもしれません。
ウェスト周りが調節できるアジャスターがついていると便利ですよ。
高価すぎない相場感で用意する
礼服は、自分の収入に見合った高価すぎない相場感のものを選びましょう。
礼服は百貨店などの紳士服売り場や通販で買えますが、価格は2万円程度から数十万円までと幅広いです。ちなみに、5万円前後で買う人が多いのだとか。
高いものを買っても、着用期間が長いため費用に対してパフォーマンスが悪いということはありません。しかし、安いものを買うと値段の違いは素材に表れるので、安っぽく見えてしまいます。
無理してブランドの高価な礼服を揃える必要はありませんが、素材感は見ておきましょう。
礼服を着こなすポイント
仕事で着用するスーツとは違い、礼服は結婚式という華やかな場所に着ていくものです。ネクタイやポケットチーフなどの小物にこだわることで、普段のスーツとは違う印象的な着こなしができます。
結婚式を盛り上げるためにも、おしゃれな小物使いをマスターしましょう。
ネクタイの結び方
ネクタイは白やシルバーグレーが定番ですが、パステルカラーやストライプ、小さなドット柄もおしゃれです。
ネクタイの結び方も、いつもと変えることで印象が異なりますよ。結び目が上品なダブルノットや、ボリューム感のあるウィンザーノットがおすすめです。
ネクタイの選び方や結び方については以下の記事で詳しく解説しています。
URL: https://www.kekkonshikijoerabikata.com/6771/
ポケットチーフの選び方
ポケットチーフは白が定番ですが、ほかの色を選ぶときはネクタイと色や素材を合わせると失敗しません。
ネクタイが柄物の場合は、ポケットチーフを無地にするとさりげなく、同じ柄物で合わせれば華やかさがプラスされます。
ベストの選び方
礼服の中に着るベストは、どんな色とも合わせやすいグレーの無地や千鳥柄がおすすめです。濃いグレーはシックで大人っぽく、薄いグレーは若々しく華やかな印象になります。
ジャストサイズのベストをすっきり着こなすのがポイントです。
カフスボタンでおしゃれに
袖口につけるカフスボタンはあまり目立ちませんが、さりげないおしゃれができるアイテム。パーティシーンを、より華やかに彩ってくれます。
結婚式では奇抜なデザインやチェーン系は避け、シンプルで上品なカフスボタンをつけるとよいでしょう。ネクタイピンと合わせたデザインもおしゃれです。
まとめ:結婚式では礼服を正しく着て行こう
結婚式などの冠婚葬祭には、礼服を着るのがマナーです。男性の礼服は、正礼装、準礼装、略礼装とあり、立場やタイミングによって着る服装が異なります。
略礼装のブラックスーツは、葬儀やほかの式典などでも着用できますが、ビジネススーツとは違うので選ぶときに注意が必要です。長く着られる定番のデザインを一着揃えておくとよいでしょう。
同じ雰囲気になりがちなブラックスーツでも、ソックスなど小物にこだわることでおしゃれに着こなせます。華やかさも演出しつつ、正しい礼服を着て結婚式に参列しましょう。